『VESPERBELL』という名前の意味(その④)

ガチ考察

●1章 「vesper」と「vesper bell」
2章 「vespebell」と『VESPERBELL』
 ┣0節 1章の復習・2章の予習
 ┣1節 「祈り」と『VESPERBELL』の世界観
 ┃┣0. この節でやること
 ┃┣1. VESPERBELL世界での「祈り」の種類  
 ┃┣2.歌詞の中の関連ワード
 ┃┣3.『廻(めぐ)る』
 ┃┃┣(1)「廻る」の一般的な意味
 ┃┃┣(2)『VERSUS』の『廻る』
 ┃┃┣(3)《『廻る』=輪廻する》からわかること
 ┃┃┣(4)『廻る』を掘り下げる①―『VERSUS』の構造
 ┃┃┣(5)『廻る』を掘り下げる②―「『廻る』世界」
 ┃┃┣(6)『廻る』を掘り下げる③―「『廻る』意味」
 ┃┃┗(7)結論:『廻る』とは
 ┃┃
 ┃┣4. 『記憶』
 ┃┣5. 『運命』・『光』
 ┃┗6. 1節のまとめ
 ┃
 ┗2節 「時間」か「鐘」か

前回の記事:『VESPERBELL』という名前の意味(その③)

(2章1節3. 『廻る』 の続き)

(4)『廻る』を掘り下げる――①『VERSUS』のメロディー構造

『VERSUS』における『廻る』とは具体的に何を言っているのか、さらに掘り下げよう。


『廻る』を言い換えるもの・『廻る』と対比されているものを探せば、その中身が見えてくるだろう。

楽曲の歌詞を分析するとき、メロディーパートの構造がヒントになる。
歌詞の言い換えや対比は、メロディーの構造と連動することが多いからだ。

そこで、「Aメロ・Bメロ・サビ」といったJPOPのメロディーパート構造に従って歌詞を並べてみよう。

(Story & Lyrics:ハル)
【表】VERSUSのメロディー・歌詞の構造

上の画像のように整理できる。

以降、歌詞の場所は
『VERSUS』[1-A1]
のように記載する。

Cメロから曲の終わりまでの歌詞とMVの描写をつなぎ合わせるとこうだ。

(A)ヨミとカスカの行動の流れ

一人明ける夜に飲み込まれてしまったヨミとカスカが、それぞれ一人で、光を辿って扉を選びその手で扉を開いて踏み出し、二人で壁を打ち破りながら走っていく

(B)光が導くもの

・光は、運命(さだめ)として、制服姿のヨミとカスカが一人で扉を選ぶときにどれを選べきか導くものである。

・光を辿ったさきに、求めていた『廻る』意味がある。

(C)光を辿って扉を選んだ先で起こること

空を背景に、舞台衣装姿のヨミとカスカが合流する。
2人が扉を選んだ先で行うことは、歌詞に示されている。

・自分貫いて、阻む壁を打ち破る
・滾る鼓動響かせて走る

この2つを組み合わせると、阻む壁を打ち破りながら走っていくと言える。

(D) (C)で行うことの目的・意味

鳴らせ
世界を自分の舞台に変えていくのだから
(『VERSUS』[1&2-S2])

走れ
廻る世界に向かって立ち向かうのだから
(『VERSUS』[L-S2])

世界を自分の舞台に変えていくのだから、鳴らせ

のほうはわかりやすい。

ヴォーカルユニットが「世界を自分の舞台に変えていく」ために「鳴らす」のは、歌声を差し置いて他にない。

「鳴らす」のは1度きりではないから、これを言い換えるなら《歌声を紡いでいく》という表現が適切だ。

[1-A1&2]のMV中でも、歌っている様子が描写されている。

「世界を自分の舞台に変えていく」というのは、《自分たちの歌声を世界中に届かせる》ことの比喩的表現であると読める。

一方、

廻る世界に向かって立ち向かうのだから、走れ

のほうは、そのままでは分かりづらい。

そこで、

世界を自分の舞台に変えていくのだから、鳴らせ

との対比構造で読解してみよう。

この2つに共通する構造である「○○するのだから●●しなさい」に着目しよう。
これは、
「○○するという目標を達成するために、●●する必要がある」
「●●することで、○○するという目標を達成することができる」

という目的ー手段関係である。

次に、「鳴らす」と「走る」の関係を考えよう。

「鳴らす」と「走る」は、両方とも「滾る鼓動響かせて」行うものとして描かれている。([1~L-S2])
そこで、この2つは同じことを指すのではないかと推測できる。

「鳴らす」は、先述のとおり「歌声を紡いでいく」ことを指す。

「走る」は、ここでは比喩表現である。
落ちサビの部分で、《光と辿って扉を選び、扉を開けて踏み出していく》というのは、未来の選択の比喩だ。
「扉を開け、踏み出し」たあとに「走る」というのは、「選んだ未来を進んでいく」つまり「自らが選択した将来像を実現するための行動を取る」ことだと言えそうだ。

『VERSUS』でヨミとカスカが選択しているのは、『VESPERBELLヨミ・カスカ』として世界中に歌声を届かせるという未来だ。

そのために行う行為は「鳴らす」=《歌声を紡いでいく》ことである。

つまり、「走る」と喩えられている行動の具体的な中身が「鳴らす」であるという関係に立つ。

「鳴らす」と「走る」のそれぞれの目的、
・「世界を自分の舞台に変えていく
・「『廻る』世界に向かって立ち向かう」
の関係についても同じことが言えるはずだ。

「『廻る』世界に向かって立ち向かう」ことの具体的な中身が「世界を自分の舞台に変えていく」である。

(E) まとめと次回予告

歌詞の対比構造を整理することによって、
「『廻る』世界に向かって立ち向かう」ということの具体的な中身のひとつが
「世界を自分の舞台に変えていく」=《VESPERBELLヨミ・カスカの歌声を世界中に届かせる》
であるということがわかった。

しかし、まだ『廻る』の具体的な意味を解き明かすには届かない。
これを解明するには、単なる整理を超えて、さらに歌詞に立ち入って解釈していく必要がある。

…といったところで本稿はおしまい。
(その⑤)に続く。

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