こんにちは、ひもです。
この記事は、
『VESPERBELL』という名前についてちょっと本気出して考えてみた(その①)
の補論です。
上の記事では、「vesper」「vesper bell」 という言葉の意味・ニュアンスについて検討しています。
ところで、言葉の「意味」ってどうやって検討するのでしょう?
また、「ニュアンス」って便利な言葉ですが、「意味」と何が違うのでしょう?
「本気出して考えてみる」からには、最初にそのあたりを整理する必要があります。
しかし、我らが『VESPERBELL』とあまり関係ない話を長々とするのもアレですので、【補論】として別の記事にしました。
わざわざこの記事を開いてくださった奇特な貴方、ありがとうございます。
よろしければ、お付き合いください。
辞書に聞いてみた
ある言葉の「意味」、ある言葉の「ニュアンス」、この2つは「言葉が指し示している内容」のことを指す点で共通している。
では、どこが違うのか。
ある言葉の「意味」は、辞書に書いてあるイメージだ。
その言葉が使われるとき「一般的に指しうる内容」を客観的にまとめている。逆に言えば、ある言葉が、その「意味」にない内容を直接指すことは、基本的にない。
「ニュアンス」と辞書で引くと、
《ある語・語句の持つ表面的な意味以外の、情緒的な意味や細かな意味。また、語句や文章の言外に表わされた意味や話し手の意図》
と出てくる。
《表面的な意味よりも細かい意味》、というのを言い換えると、「辞書に載っていない」が「その言葉の示す内容として間違っていない」もの、ということになる。
《語句の言外に表わされた意味》も同様に理解できそうだ。
これをパターン①としよう。
これに対して《話し手の意図》のほうは、言葉の示す客観的な内容ではなく「話し手がその言葉を使うことで、どんな内容を表現したかったか」という「話し手の脳内」に注目することになる。
その人ごとに違ってくるから、辞書に載せられない。
《情緒的な意味》も、その言葉に込められた《感情的・感覚的な要素》と捉えると、「話し手の脳内」に注目していそうだ。また、「聞き手」が読み取るものであるという点では、「聞き手の脳内」にも注目している。
これをパターン②としよう。
「ニュアンス」の元の言葉をヒントにする
もともと「ニュアンス」という言葉はフランス語で「微妙な違い」「色合い」という意味だそうだ。
言葉の「微妙な違い」というと、
「ある言葉の内容」
「辞書では同じ意味であるとされる別の言葉の内容」
の2つの間にある、
《「辞書に載っていない」「小さな」あるいは「あるともないとも言えそうな」違い》
を指すものであろう。
ということはパターン①のことだ。
パターン①というとややこしいから、この小さいものを「ディテール」、小さい差を「ディテールの違い」と呼ぶことにしよう。
このディテールの違いを解明するには、その言葉が使われる場面を観察して比べることになりそうだ。
たとえば、「夕焼け」というのディテールを知りたいとしよう。
「夕焼け小焼けの赤とんぼ」
の「夕焼け」を「夕日」に入れ替えてみて、
「夕日小焼けの赤とんぼ」
にしてみる。
このように、同じ意味の別の言葉に入れ替えてたら表現できなくなってしまうものがあったら、それがディテールということになる。
ニュアンスはフランス語で「色合い」という意味だったしても、言葉そのものに色なんて付いていない。
色が付くとしたら、その言葉を使うことによって「話し手の脳内」「聞き手の脳内」に生ずるイメージであろう。ということはパターン②のことだ。
これを「イメージ」と呼ぶことにしよう。
その言葉について「話し手が持っているイメージ」は、まずは話し手に尋ねるのが1番だ。
それができないとしても、「話し手のその言葉の使い方の癖」を分析することである程度解明できそうだ。
一方「聞き手」がどのようなイメージを持つかは、聞き手にインタビューするしかない。
とはいえ、言葉は「一人が勝手につぶやく」わけではなく「話し手が受け手に伝えるもの」である。
相手に伝わらない言葉は使われないだろうから、ある言葉が使われている時代や地域などを絞り込んでいって「その言葉がこの集団で使われるとき、こういうイメージを持っていた」ということを突き止めることができたら、「聞き手が持っているイメージ」もそれである可能性が高い。
そういう形で推理することができる。
このように、「その集団内で共有されているイメージは、その集団内ではディテールでもある」と言うことができる。 つまり、ディテールとイメージは明確に区別できるものではない。 ただし、本稿では便宜上、「どちらの言葉を使うのがふさわしいか」に着目して2つの言葉を使い分けることとする。
そして、言葉のイメージが変わるには、何か理由があるはずだ。
「聞き手の時代よりちょっと前の時代のイメージ」がわかり、聞き手の時代までにイメージが変わる理由がなかったら、聞き手の時代にもそのイメージが受け継がれていると見ることができる。
見方を逆にすると、「その言葉が使われだした最初のときのイメージ」がわかったら、だんだんと時計の針を進めながら、「変わる理由があったか」辿る。こういった歴史家のようなアプローチが可能だということだ。
もちろん、「聞き手の抱くイメージ」と同じ方法を「話し手の抱くイメージ」の推理に使うこともできる。
しかし、歴史家のアプローチは、「その時代では一般的にどうだったか」を根拠にして、「話し手・聞き手もそうだった可能性が高い」と推測するものだから、「話し手・聞き手がそうでなかった可能性もある」ということを否定できない。
「話し手のその言葉の使い方の癖」のほうが、ずっと強い証拠になるだろう。
まとめー「意味」「ディテール」「イメージ」を検討する方法
このように、言葉の「意味」は辞書で知ることができる。
ディテールを知るには、別の言葉と比べる必要がある。
「話し手のイメージ」を知るには、まずは話し手がその言葉をどのように使っているかの癖を分析する。
また、「話し手のイメージ」も「聞き手のイメージ」も、その言葉が話し手と聞き手のいる時代・地域でのイメージ、あるいはもっと前の時代のイメージからの変遷から推理することができる。
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