こんにちは、BELLSのひもです。
この記事は、
↑↑の続きです。
未読の方は、その①からお読みいただけると分かりよいと思います。
すでに読んでくださった方、ありがとうございます。
引き続き、お付き合いいただけると嬉しいです。
2節 初期曲グループの内部関係
――「Chapter」をヒントに――
1. 全曲「同じ物語」ではない
さて、1節で、初期曲グループは「同じ人の作った物語を共有している」点で、中期以降曲グループと区別できると説明した。
注意してほしいのは「同じ物語」とは言っていないことだ。
「同じ人の作った物語」だから「同じ物語」の可能性が高いが、そうでない可能性もある。
そして、VESPERBELLの初期曲グループは、2つの物語に分かれていると考えられる。
そのヒントになるのが「Chapter」だ。
2. ひと目でわかるもの――EP『EX MACHINA』収録曲
(1)イラストを見てみよう
EP『EX MACHINA』関連のイラストには、わかりやすく「Chapter.01」が載っている。
2つあるので見てほしい。
①EP『EX MACHINA』のパッケージイラスト
VESPERBELLの楽曲において「Chapter」が最もわかりやすいのは、EP『EX MACHINA』のパッケージイラストだ。
一番大きく書かれた「EX MACHINA」というタイトルの上をよく見ると、
[Chapter.0]
01 – ignition
02 – hurt
03 – EX MACHINA
と書いてある。
②ignitionのMVサムネイルイラスト
ここでも、タイトルロゴ
と書いてある。
(2)MVの概要欄を見てみよう
実は、イラストを見るまでもなく、MVの概要欄にはっきりと書いてある。
ignitionは、
Chapter.01-01
ignition from EX MACHINA
EX MACHINAは、
Chapter.01-03
と書いてある。
まとめると、EP『EX MACHINA』の各楽曲は、
Chapter.01 =章の番号
[EX MACHINA] =章のタイトル
-01 〜 -03 =楽曲の番号
曲タイトル =楽曲のタイトル
という形で体系化されている。
VESPERBELLのオリジナル楽曲は「Chapter.○○」という『章>曲』の構造が使われるようだ。
具体的には
章番号01:章タイトル[EX MACHINA]
というグループがあって、そのなかに
楽曲番号-01: 楽曲タイトル ignition
楽曲番号-02: 楽曲タイトル hurt
楽曲番号-03: 楽曲タイトル EX MACHINA
の3曲が番号順に並んでいることがわかる。
3. わかりづらいもの――RISE,VERSUS
(1)MVの概要欄には…
RISE,VERSUSのCDパッケージには、「Chapter」に関することは書かれていない。
MVも同様だ。
そこで、MVの概要欄を見てみると、『EX MACHINA』各曲とは違うことが書いてある。
RISEは
00. Prologue
VERSUSは
00. Epilogue
だ。
EP『EX MACINA』収録曲のように、
Chapter. xx [xxxxxx] -xx xxxx という形式は取っていない。
これはどう位置付けるべきであろうか?
RISE, VERSUS の2曲と、EP『EX MACHINA』収録曲との関係に関わってくる。
まず「00.Prologue」「00.Epilogue」という記載そのものからわかることを検討していこう。
(2)「Prologue」と「Epilogue」
まず、
00. Prologue
00. Epilogue
の「Prologue」「Epilogue」部分に注目してみよう。
「Prologue」「Epilogue」は、日本語でもそのまま「プロローグ」「エピローグ」として定着している。
「Prologue」は、演劇や小説などで、「本編」に先立って披露される前置きの部分だ。
その内容は、「本編」で描かれる物語の発端・始まりであることが多く、これを前日譚とも言う。
「Epilogue」は、演劇や小説などで、本編が終わったあとに披露される部分だ。
その内容は、「本編」で描かれた物語の結末の後の展開であることが多く、これを後日譚とも言う。
このように「Prologue」と「Epilogue」は、「本編」を挟んで対になる存在である。
当然、「Prologue」である「RISE」と、「Epilogue」である「VERSUS」、この2曲も対になる存在ということになる。
【余談】「Pro」と「Epi」 「Prologue」…「Pro」+「logue」 「Epilogue」…「Epi」+「logue」 と分解できる。 2つに共通する「logue」は、「話す」という意味だ。 「pro」は「~の前」 「Epi」は「~の後」 というニュアンスであるため、「logue」=「話す」につけると 「前の話」 「後の話」 となる。 「Pro」と「Epi」の由来はギリシャ語だ。 ギリシャで「Pro」と「Epi」といえば、ギリシャ神話に登場する巨人の兄弟「プロメテウス」「エピメテウス」を思い浮かべる方もいるだろう。その「プロ」「エピ」である。 なお、「○○」+「logue」で出来ている言葉は他にもある。たとえば、 「1つ」という意味の「mono」を付けると「モノローグ」(独白)。 「2つ(の間)」というニュアンスの「dia」を付けると、「ダイアログ」(対話)となる。
(3)「00.」
次に、
00. Prologue
00. Epilogue
の「00.」部分に注目したい。
「Prologue」が「00.」であることは特に違和感がない。
たとえば小説の章立てでは、
序章(プロローグ)
1章
2章
3章
…
と、プロローグには番号を振らないことが多い。
この序章にあえて番号を振るときは、1の前だから「0章」という言葉が使われる。
しかし、「Epilogue」が「00.」となるのは少し不思議である。
「Epilogue」は、少なくとも「Prologue」より後にあるのだから、数字を振るとしたら、「00.」より後、「01.」以降でないとおかしそうだ。
というわけで、「00.Prologue」「00.Epilogue」という記載には、文字面だけを眺めていてもわからない、もっと深い意味がありそうだ。
別のところにヒントを探す必要がある。
4. 謎の「Chapter.0」
(1)突然現れる「Chapter.0」
実は、ヒントは、RISE, VERSUSではなくignitionのMVにある。
3:08を見てほしい。
暗転した画面に
と出てくる。
3:40の表示
と配置が重なる。
ということになるだろう。
「0」、どこかで出てきた数字だ。
そう、「00.Prologue」「00.Epilogue」の「00.」だ。
もしこの「0」と「00.」が同じもの、すなわち章番号であれば、次のような構造になるはずだ。
【パターンA】
Chapter.0 [ ] ・Prologue 「RISE」 ・Epilogue 「VERSUS」
割とすっきりいった。
「Prologue」「Epilogue」は、「曲番号の代わりについているもの」ということになった。
ただし、本当に「0」と「00.」を同じものとして扱って良いか?という疑問は残る。
一方で、「00.」は章番号ではなく曲番号だという考えも否定できない。
この場合、RISEやVERSUSが入るのは「Chapter.0」でなく「Chapter.01」の可能性もある。
仮に、RISE,VERSUSが入るのが「Chapter.0」であった場合は、
【パターンB】
Chapter.0 [ ] ・00.(Prologue)「RISE」 ・00.(Epilogue) 「VERSUS」
となる。「Chapter.0」の中身がRISE、VERSUSの世界だという点では【パターンA】変わらない。
ただし、
曲番のところに
「00.Prologue」
「00.Epilogue」
と入ることになる。前述のとおり、「Prologue」も「00.」「Epilogue」も「00.」であるのは不思議だ。
仮に、RISE,VERSUSが入るのが「Chapter.1」であった場合は
【パターンC】
Chapter.1 [EX MACHINA] ・00.(Prologue)「RISE」 ・01.「ignition」 ・02.「hurt」 ・03.「EX MACHINA」 ・00.(Epilogue)「VERSUS」
といった構造になるだろう。
「03.」の次、いうなれば「04.」の位置にあるEpilogueの曲番が「00.」なのは不自然だ。
しかし、「Prologue」「Epilogue」ともに「本編の一つの章として扱うほどでもない存在」という位置付けだから、「04.」と付けるのもおかしい。
このように、いまいち据わりが悪い感じがするが、あり得ないといえるほどではない。
この場合、「Chapter.0」は、「RISE,VERSUSより前の世界」ということになる。
【パターンA】【パターンB】【パターンC】どれが正解だろうか。
今のところ、どれか一つを選ぶ決定打は見つからない。
そこで、ここからは視点を変えて、「Chapter.0」の中身は何か検討してみよう。
【パターンA】【パターンB】は、「Chapter.0」に入るものはRISE,VERSUSの世界だという立場だ。【パターンC】は、「Chapter.0」に入るのは「RISE,VERSUSより前の世界」だとする。
「Chapter.0」の中身がわかれば、上のどちらかの可能性は消去することができる。
そして、この検討には、ignitionのMVで「Chapter.0」が登場した文脈がヒントになるはずだ。
(2)「Chapter.0」のヒントを探せ―MV映像編
まずは、MVに「Chapter.0」という文字が登場する流れを確認しよう。
実際に登場するのは3:07だが、もう少し遡って、2:50から見てほしい。
Cメロパートに入るところだ。
さて、画面手前に映る青い羽根をじっくり見ながら再生しよう。
最初は背景を透かしているが、途中から違うものが映る。
―2:57「進む背中に」
羽根に、VERSUSのMV中の、並ぶ扉のまえに佇むカスカの姿が映し出される。
―3:06「あの日の記憶」
これもVERSUSのMV中の、扉を開き踏み出すカスカの姿が映し出される。
―3:07 「はるか彼方」
画面が暗転する。中央に
と出てくる。
次第に、画面にノイズが走りだす。
ここから落ちサビが始まる。
―3:13「たどり着く重なる今幽かに色付き見える」
ノイズ混じりの画面に、モノクロ画像が高速フラッシュで流れる。
スロー再生で確認できたものを順に列挙すると、
・革命デュアリズム――二人が向き合って歌っている。
・VERSUS――カスカが扉を開きかけている場面。
・VERSUS――並んだ扉の前に佇むカスカ。
・VERSUS――手を振り笑い合う二人。
・RISE――膝を抱え、肩を抱くカスカ。
・RISE――電車の窓から外を眺めるヨミ。
・RISE――空き教室の机に座るヨミ。
・RISE――友人に囲まれ笑うカスカ。
VERSUSとRISE、それぞれの画像の順番が気になる。実際のMVで流れる順番と逆順、いわば逆再生になるかたちだ。
―「道」3:22
ここで回想パートが終わる。EP『EX MACHINA』のキービジュアルが、カラーで、点滅しながら表れてくる。
ここまでが「Chapter.0」前後、Cメロ&落ちサビの一連のMVシーンだ。
(3)「Chapter.0」のヒントを探せ―歌詞を整理しよう
歌詞全体の考察は、いずれ個別の楽曲レビューにて行う予定だ。
今回は「Chapter.0」に関する文脈だけ考えよう。
ignitionでメインに描かれているのは、1-B2にある通り
おぼろげな記憶たどる旅路
である。
Cメロで出てくる
諦めること知らないでずっと進む背中に 憧れていたあの日の記憶
も、この「おぼろげな記憶」の一部だろう。
そして、それは「はるか彼方」にあるわけだ。
一転、落ちサビでは、
たどり着く 重なる今
『どこか/何か』にたどり着いている。
それによって、道が「幽かに色付き見える」ようになった。
Cメロから落ちサビの歌詞は、乱暴に言い換えるとこんな感じだ。
では、『どこに/何に』たどり着いたのか?
おそらく「記憶」とみていい。
色褪せる視界(1-A1)
繰り返す視界(2-A1)
とあるように、「おぼろげな記憶」しかない2人の視界は、色褪せたものであった。
誰が為に明日を目指す?(1-A1)
誰が為に針は回る?(2-A1)
と自問するほど、日々を歩む目的・意味がはっきりせず、空虚な繰り返しであった。
それが、S1で『どこか/何か」に「たどり着」いて「重な」ったことによって、道が
幽かに色付き見える
ようにまでなった。
二人から見える世界の景色すら変えてしまうようなもの、それは、この曲において二人が辿り求めていたもの、「記憶」だろう。
その「記憶」はどのようなもので、なぜ世界の見え方を変える力があるのか?
この一瞬に 一秒に意味を求めて 只身を委ねてく(1-B)
この一瞬に 一秒に意味ある限り 理想が泳ぎだす(2-B)
このように、二人の旅路は、「意味」を求めるものでもあった。つまり、「記憶」と「意味」は一体のもの、「記憶」の内容は、思い出すことで、この一瞬一秒に「意味」を与えてくれるものだ。
(4)MV映像と歌詞を照らし合わせてみよう
(3)で歌詞に基づいて整理した展開と、(2)で確認したMVの描写とを、照らし合わせてみよう。
Cメロ部分、青い羽根に写っていた制服姿のカスカの姿は、「あの日の記憶」を描いているものだと見て違和感なさそうだ。
落ちサビ部分、革命デュアリズムを歌う2人に始まり、VERSUS, RISEの画像が、展開を遡るようにフラッシュで切り替わっていった。
これは「記憶」を遡り辿っていったという描写だろうか。
すくなくとも、画像のシーンは、ここで「たどり着」いた記憶の一部であるはずだ。
ここで映されている「記憶」は、思い出すことで「意味」を与えてくれるようなものだろうか?
RISEで描かれていたのは、日常を繰り返した制服姿の「ワタシ」と、舞台衣装に身を包んだ「違う私」。前者から後者への転換がテーマである。
VERSUSで描かれていたのも、自分の進むべき将来の選択肢を選び、踏み出し、「世界を自分の舞台に変えていく」ために「立ち向かっていく」転換点だ。
両者とも、何者でもなかった二人が「VESPERBELLとして舞台に立つ自分」に「意味」や価値を見つけ、それを道標に進み出す転換を描いたものである。
ここで見つけた「意味」や価値こそ、VESPERBELLとして歩む「意味」の原点だろう。
この「記憶」を思い出すことによって「意味」を取り戻したからこそ、視界に色が戻ってきた。
Cメロから落ちサビにかけて、このように理解できそうだ。
(6)(5)から出る結論
このような流れで見ると、落ちサビでたどり着く「記憶」は、何者でもなかった二人が「VESPERBELLとして舞台に立つ自分」に「意味」や価値を見つけ、それを道標に進み出す転換点であるはずだ。
そして、「記憶」にたどり着こうとしているその場面で存在を明かされた「Chapter.0」は、この「意味」に強く関係するものであるはずだ。
そのため、「Chapter.0」の中身は、「意味」を見つける転換点を含むものでなくてはならない。
少なくとも、「意味」探しに辿り着く前の2人だけを描いていては、不十分である。
そもそも、「Chapter.0」の一部に「VESPERBELLとして革命デュアリズムを歌う2人」が混じり込んでいる以上、「意味」を見つけた後の世界も中身であると言わざるを得ない。
したがって、「Chapter.0」の中身は、RISE, VERSUSの世界である。
【余談】「旅路」はどこにあった? 「おぼろげな記憶たどる旅路」は、どこにあるだろう。 じっさい記憶を思い起こす作業は、脳、あるいは心のなかで行うものだ。 旅路というのは、記憶を辿るプロセスの心象風景だろう。 (あるいは、思い出すきっかけとなる場所やものを巡るということも考えられるが。) 記憶に思いを馳せているとき、意識は自分の内側に描かれる世界だけに向く。 外側の、実際に物事が起こっている世界からは切り離される。 これは、夢の世界と同じだ。 また、眠りに落ちずとも、夜は思考を当て所なく巡らせがちな時間だ。 たとえば、夜に電気を消したあとのベッドであったり、キャンプで火の番をしているときだったり。 手元のやるべきことに追われず、自由に心を遊ばせられる時間は、夜に多い。 「日が昇る 夜が走る照らす 駆けるよりも疾く」 というサビが描いているのは、 日が昇りだし、太陽に照らされる範囲が広がっていき、暗闇=夜との境界線が、人が駆けるよりも早いスピードで遠ざかっていってしまう… という情景であるように思う。 逆に言うと、走り去る前の夜が、いままで私の傍らにいたはずだ。 そこに、「記憶辿る旅路」があったのではないか。 夢、あるいは夜の物思いのうちに、日々歩む「意味」を確かめる。 理想への道は、楽な道のりではない。 昼間、実際に足を進めているあいだは、他のことなど考えている余裕はなく、ただ目の前にあるものに精一杯挑むしかない。 そして迎えた夜、当然、疲れ切っているだろう。 ふと、考えてしまう。 なぜ、こんなに苦しい思いをしなければならないのか。 明日も、わざわざこんなに険しい道を進まなければならないのか。 その答えは、自分の胸の奥にある。 かつて、この道を歩むと決めたきっかけ。目指すところに、この理想を掲げた理由。 目の前のことに一生懸命でい続けるあまり、時折見失ってしまうもの。 明日も前に踏み出せるだろうか…そんなとき、胸の奥から掘り起こして、まじまじと見つめ直すもの。 その熱を種火に、心のエンジンに点火=ignitionする。 そして始まった今日という一日に、立ち向かっていく。 そんな歌ではないだろうか。
(7)MVの演出と答え合わせをしよう
このような「Chapter.0」=RISE, VERSUSの世界 という捉え方は、MVの演出とも整合する。
今一度、「Chapter.0」と表示される場面を思い出してほしい。
3:07から3:12にかけて5秒の間「Chapter.0」と表示される。
続けて「画像のフラッシュのシーン」に映る。
この2つのシーンに注目しよう。
この2つのシーンの関係は、2通りに捉えることができる。
1つ目は「Chapter.0」の中身を「画像のフラッシュのシーン」が説明しているという考えだ。
2つのシーンは、「=」で結ばれる横並びの関係だ。
「Chapter.0」と5秒間も表示したのは、それだけ強く「「Chapter.0」が存在するんだよ」とアピールする演出意図だ。
2つ目は、「画像のフラッシュのシーン」が時間を逆行していることに着目し、「実は「Chapter.0」という暗幕の裏でもフラッシュが流れていた」と考える。
2つのシーンは、時系列的に連続する関係、記号で表すなら「→」だ。
「Chapter.0」という表示が現れるとともに、画像のフラッシュが始まっていた。
フラッシュは時間の流れを遡って描いているものだから、「Chapter.0」という幕に隠されていたのは、「二人が革命デュアリズムを歌う」ようになった後の世界。
RISE, VERSUSのMVのなかで、舞台衣装をまとった二人として描かれている部分だ。
「Chapter.0」という暗幕を立ててそのシーンを隠したのは、「その姿は、このMVを観ている貴方自身が直接その目で観て確かめるのが1番だよ」というメッセージだと捉えられる。
私自身は、まだ、この2つの解釈のどちらが正しいか確信するに至っていない。
しかし、どちらの解釈を採用しようと、ここでの問題、すなわち、「Chapter.0」の対象として
(ア) RISE,VERSUSの世界
(イ) (ア) よりも前の世界
どちらがふさわしいか、については同じ結果が出る。
まず、
・「画像のフラッシュのシーン」は「Chapter.0」の説明
と捉えると、画像のフラッシュで写っているのはRISE,VERSUSのシーンの一部なので、(ア) がふさわしいということになる。
次に、
・「Chapter.0」では、二人が舞台衣装を纏うようになった後の様子が描かれている
だとすると、これは(イ) RISE, VERSUSより前の世界にはありえないから、やはり(ア) がふさわしいことになる。
このように、MVの演出という面からも、「Chapter.0」=RISE,VERSUSの世界 という理解が正しいと解される。
(8)結論
「Chapter.0」がRISE, VERSUSの世界だということがわかった。
したがって、
- Prologue 「RISE」
- Epilogue 「VERSUS」の位置付けは、
【パターンA】
Chapter.0(=00) [ ] ・Prologue 「RISE」 ・Epilogue 「VERSUS」
【パターンB】
Chapter.0(≠00) [ ] ・00.(Prologue) 「RISE」 ・00.(Epilogue) 「VERSUS」
のどちらかである。
そして、ここまでわかれば、わざわざ0章‖1章と「仕切り」が用意されている以上、
《初期曲グループのなかで、さらに「0章」グループと「1章」グループでわけて考えるべきである》
という結論に達することができたといえる。
(9)残された課題――AかBか
以上の考察では、【パターンA】か【パターンB】の”どちらかである”というところまでわかった。
本稿のテーマからは、これ以上の検討は蛇足だ。
しかし、
「”どちらかである”ではすっきりしない、AかBかはっきりさせろ」
と思われる読者もいるだろう。
そこで、現時点での私のアイディアだけ手短に述べることとする。
私は【パターンB】が正しいと思う。
それは、曲番号として
「00.Prologue」
「00.Epilogue」
と書く必然性があると考えるからだ。
「Prologue とEpilogue が同じ順番なのはおかしい」という一般的な指摘はその通りである。
しかし、一般的におかしいからこそ、RISEとVERSUSの世界を表現するものとして正しいのだ。
詳細は別稿で述べることになるが、VERSUSの歌詞において「輪廻」はそれなりに重要な概念である。
「輪廻」とは大まかに言うと「終わりがなく、同じ道をぐるぐると繰り返すこと」である。
「本来は物語のゴールであるはずのEpiogueが、Prologueと同じスタート地点(「00.」)に戻ってきてしまっている」というのはまさに「輪廻」である。
このように、「輪廻」にかかわるVERSUS(とRISE)の世界を示唆する意図的な演出であるように思える。
また――かなり強引で、書くか悩んだのだが――「00」と「輪廻」を象徴する記号「∞」は、似ていないだろうか?
(10)次回予告
さて、ここまでで、VESPERBELLのオリジナル楽曲は、
・「初期曲」のうち Chapter.0
・「初期曲」のうち Chapter.1
・「中期以降曲」(Chapter何にあたるのか、そもそもChapter構造を採用しているかわからない)
で分けるべきことがわかった。
続く次回は、VESPERBELLの楽曲世界において「Chapter.0」「Chapter.1」はどんな地位にあるのか? を検討していきたい。
先に結論の一部をお伝えすると、「Chapter.1」は特殊な世界だ。
「Chapter.0」と「Chapter.1」の「Story」は切り離して考える必要がある。
…といったところで、次回も、よろしければお付き合いください。
【余談】Chapter.0の章名は? MV上でChapter.0が表示される部分は ―――――― chapter.0 [ ] ―――――― と、真ん中に章名(Chapter.1でいう[EX MACHINA])が入るべきスペースがある。 なぜここが空白なのか。 さしあたり3つの理由を思いついた。 ①機会の問題 RISEとVERSUSは別のシングルでリリースされており、EP『EX MACHINA』のように統一パッケージでないから、章名を書く機会がなかった。 (いきなり1stシングルで「第0章」と書くのは情報的にノイズだし、デザイン上もゴテゴテして美しくない。) これはかなり現実的だ。 ②タイミングの問題 そもそも「Chapter.0 = RISE, VERSUS」という構想がなかった 「Chapter」概念が明確に登場したのはEP『EX MACHINA』からである。というか、RISE, VERSUSと区別するために「Chapter.1」と区切ったのが「Chapter」概念のきっかけだという可能性もある。 そのため、RISE, VERSUSリリースの段階では、「この2曲まででChapter.0にしよう」という明確なビジョンがなかった。 そのため、Chapter.0として名付けようがなかった。 ③意図的な表現 「Chapter.0」の章名はない、あるいは「 」つまり空白が正しい。 「Chapter.1」は特定のコンセプトを持ったEPで、「EX MACHINA」はそれを象徴するタイトルである。 一方、「Chapter.0」は「EX MACHINA」のような、いわば世界を限定する特定のコンセプトを持たない。 いわゆる「素」、あるいはプレーンなVESPERBELLを描いたものだ。 そのため、「」に入れるような、世界を限定する特定のコンセプトがないから、章名は存在しない、あるいは無理に 「」に収めるとしたら空白なのである。 このように、意図的な表現である可能性もある。 現段階では、どれが正解かわからない。
コメント