はじめに
2024年4月20日、VESPERBELLプロデューサーN氏(@urakata_n)のご退任が発表された。
(※REALITY Studios内での異動とのこと。ご栄転であろう。)
私はVESPERBELLのファンだ。
私の応援するVESPERBELLには、Nさんも含まれていた。
Nさんの思い出を記事にしようと書き始めたものの、記憶がだいぶ曖昧だった。
そこで、まずは
《VESPERBELLとNさんの歩み》について明らかになっていること
…をまとめてみた。
私が知る前のことについても、わかる限りで情報を集めてみた。
情報提供のお願い
この記事内に間違いがあったり、抜け・漏れがあったら、どんな些細なことでも教えてほしい。
・この記事のコメント欄
・Twitter(@bells_sllaq)へのリプライ・DM
まで、是非ともお力添えのほどよろしくお願いします。
この界隈に触れてこなかった方にも伝わるよう、詳細に書いている。
「記事」というより「資料集」といった感じだ。
webの片隅に転がしておいて、いつか誰かが検索したときに役に立てば嬉しい。
しかし、もしBELLS諸兄が
「ああ懐かしいなぁ」
と読んでくれたり、
将来新しくVESPERBELLを知った人が
「へぇ、VESPERBELLにはこんな歴史があって、Nさんっていうすごいプロデューサーがいたんだ」
となってくれたら望外の喜びだ。
それでは、お付き合いのほどよろしくお願いします。
NさんとVESPERBELL(とREALITY)史
1. VESPERBELLより前のNさん
(1) 2019年3月
――『マグロナちゃん』『皇牙サキ』
実は、『VESPERBELL』が日の目を見るより1年以上も前から、Nさんは『Nさん』としてインターネット上に存在していた。
遡ること2019年3月20日。
マグロナちゃんこと『魔王マグロナ』のYoutube配信に『REALITYの担当』として出演するとともに、[@urakata_n]というアカウントでツイッターを開始している。
【Note.01】魔王マグロナ
名前:マグロナ
種族:バーチャル魔王おじさんおじさんが自分で絵を書いて自分で動かしたLive2Dの体に受肉して、更にに自分で声帯を弄って自分で声を当てた地獄のようなコンテンツです。
(以上、Youtube「Magrona channel」より引用)
2018年6月5日より活動を開始した、バーチャル美少女受肉おじさん・略して『バ美肉おじさん』の草分け的存在。
【余談】『バ美肉おじさん』『Vtuber』はいつから?
『バ美肉おじさん』という概念が広まったのは2017年12月頃。
『バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん』のブレイクがきっかけだ。
Vtuberの始祖と目される『キズナアイ』が活動を開始したのは2016年12月。
このあたりの時系列は、
ニコニコ大百科 >バーチャルYouTuber関連年表(-2018年)
に詳細にまとまっている。
『兎鞠まり』(同年12月活動開始)とは『バ美肉おじさん』の盟友であり、『まぐまり』コンビとして企画配信などしていた。
『まぐまりしょうたいむ』は配信アプリ『REALITY』(➥Note.02)内でのレギュラー配信である。
Nさんが「マネージャー」ではなく「REALITYでの担当」と呼ばれていることを補足説明する。
マグロナちゃんは個人勢であり(※)、事務所に所属してマネージメントを受けるという関係ではなかった。
マグロナちゃんの活動は、Youtubeを使うこともアプリ『REALITY』を使うこともあった。
Nさんはマグロナちゃんの活動のうちアプリ『REALITY』 内で行うものの制作に関わるという関係であった。
(※2019年9月26日からUpd8に所属。Upd8のプロジェクト終了に伴い、2021年より再び個人勢に戻っている。)
【Note.02】アプリ『REALITY』
バーチャル(アバターでの)配信に特化したスマートホン向けアプリ。
株式会社グリーの子会社であるWright Flyer Live Entertainment(略してWFLE)が開発し、2018年8月よりサービス開始。
自前で3DアバターやLive2Dモデルを用意する必要がなく、スマートホン1台・アプリ1つでバーチャル配信を行うことができる手軽さで一躍人気となった。
なお、WFLEは2018年10月にREALITY株式会社に会社名を変更する。
(➥Note.04)
「REALITY」とだけ書くと、アプリREALITY・REALITY株式会社どちらのことかわかりづらい。
そのため、以下ではREALITY株式会社を始めとする会社名は四角囲みで表記することとする。
【Note.03】初期Vtuberとアプリ『REALITY』・Youtube
最近Vtuberを観るようになった人(私も含む)には馴染みがないと思うが、黎明期のVtuberは、Youtubeと並行して(またはYoutubeから出張して)アプリ『REALITY』で活動することも多かったようである。
上記マグロナちゃんもその一人である。
その他の例をいくつか紹介する。
●ぶいおん!!
REALITYでレギュラー放送された音楽番組。
歴代ゲスト出演者は
・ときのそら
・樋口楓
・月ノ美兎
・かしこまり
・AZKi
・朝ノ瑠璃
・燦鳥ノム
・ロボ子さん
…といった面々。
●月ノ美兎
2018年2月デビューの月ノ美兎氏(にじさんじ所属)は、2018年8月からREALITYでも配信している。
配信アーカイブの一部は、Youtubeの月ノ美兎チャンネル内で公開されている。
(『月ノ美兎 ~REALITY~ #○』というタイトル。)
●とある魔術の愛好家達
2019年6月、『とある魔術の禁書目録』シリーズのソーシャルゲームのPR番組がREALITYで放送された。
この番組に出演したのは、ホロライブ所属の白上フブキ、湊あくあ、ロボ子、大空スバルの4名。
https://www.4gamer.net/games/446/G044623/20190606087/
●REALITY FESTIVAL
アプリ『REALITY』上で開催される大規模フェス。
(1) REALITY FESTIVAL :CONNECT (2018年12月17日~23日)
(2) REALITY FESTIVAL2 >DIVE (2019年4月8日~14日)
(3) REALITY FESTIVAL3 (2019年8月12日~18日)
…の3回にわたり開催された。
公式サイト
・REALITY FESTIVAL2 >DIVE
・REALITY FESTIVAL3
のトップには、Vtuber好きなら見知った面々が並んでいる。
同フェス内の企画を一部紹介する。
『REALITY FESTIVAL3』内で行われた「Vtuber甲子園」では、舞元啓介、椎名唯華、歌衣メイカ、大空スバルが対戦している。
(にじさんじ甲子園の元ネタである。)
『REALITY FESTIVAL3』内で行われたマイクラ大会では
チームあにまーれ・チームホロライブ・チームハニスト・チームたまき組で対戦している。
●うらら女学院放送部
これまで挙げた例とは逆に、REALITYをメインの活動プラットフォームをしていた活動者がYoutubeでも活動したり、メインプラットフォームをYoutubeに移すといったケースもある。
たとえば、現在RK Music(➥Note.10)の社内レーベル『ライブユニオン』に所属しているVsinger、『焔魔るり』・『瀬戸乃とと』の2人。
2018年~2019年8月頃、REALITY上でユニット『うらら女学院放送部』として活動していた。
(星乃めぐり / 花月葉 / 焔魔るり / 瀬戸乃とと / トゥインクルちゃん★ の5人組。)
【Note.04】グリー・WFLE・REALITY株式会社・REALITY Studios
VESPERBELLはWFLEよりデビューする。
そのWFLEは、何度か会社名や組織体制を変更する。
この記事で頻繁に名前が挙がることになるので、予め整理しておいたほうが読みやすいだろう。
最低限理解しておいてほしいポイントは、「結局のところ全部グリーの一部門みたいなもの」ということだ。
① 2018年4月13日 グリー、WFLEを設立(100%子会社)
:バーチャル事業に参入するにあたり、事業部をWFLEとして独立の会社にした。
「この記事に書いてある会社がどーだみたいなことが難しい」というフィードバックを頂いた。
そこで、ものすごーくざっくり、「会社」関連のことを説明させてほしい。
(学生の方も、このくらいのことを知っておくとニュース等がわかりやすくなるはずだ。)
なお、もう少し丁寧な解説は、
VESPERBELL非公式wiki > 所属企業に関するあれこれ
に書いてある。
興味のある方は読んでくださると嬉しい。
まず「会社」という仕組を一言で説明する。
①株主がお金を出し合って会社を作る
②会社は株主から受け取ったお金を使ってビジネスをして、お金を稼ぐ
③会社が儲けたお金を株主が分け合う
という「株主がお金を儲けるためのシステム」だ。
「会社にお金を出すこと」を出資と言う。
「会社にお金を出した人」を株主と言う。
「会社を作ること」を設立と言う。
会社はオーナーである株主のためのものだ。
だから、「会社が何をするか」を決めるのは株主だ。
会社は株主の決めたことに従う。
「株主総会」とは、この決定のための会議の呼び名である。
株主は複数人であることが多い。
なので、会議の話し合いで意見の折り合いがつかないことがある。
そういうときは、多数決で決める。
多数決といっても、「1人1票」ではない。
「1株1票」だ。
株は「1株=○○円」というものなので、多数決では「会社にたくさん出資してる側の言う通りになる」というわけだ。
さて、株は個人でなく会社も買うことができる。
A会社がB会社の株をたくさん持っていれば、A会社はB会社に言う事を聞かせられる。
このようなA会社のことを「親会社」、B会社のことを「子会社」と呼ぶ。
A社がB社の株を100%持っているとき、A社を「完全親会社」や「100%親会社」、B社を「完全子会社」「100%子会社」と呼ばれる。
100%子会社であるB社は、A社の言うことに全て従い、A社ただ1人の利益のためだけにビジネスをすることになる。
これは実質的に「A社の中にB事業部がある」のとほとんど変わらない。
② 2018年10月1日 WFLE、REALITY株式会社に会社名を変更。
:会社名を自社の看板商品であるアプリ『REALITY』と揃えて、わかりやすくした。
③ 2023年 3月1日 REALITY株式会社、会社の組織をデザインし直す。
:社内にあった複数の業務を、それぞれ別の会社に分離した。
・REALITY株式会社(継続)
:アプリ『REALITY』の運営。
・REALITY Studios株式会社(新規設立)
:Vtuber/singerのプロデュース・マネージメント。
★VESPERBELL事業はここ。
・REALITY XR Cloud株式会社(新規設立)
:法人向けサービス担当。
【Note.04】皇牙サキ
黒ギャルJK Vtuber。
漫画やアニメに造詣が深い。
初配信で「薩摩義士伝(著:平田弘史)」を語りTwitterトレンド入りさせ、これに反応した出版社が同作品を一時的に無料公開するなどのムーブメントを引き起こした。
2018年5月1日、株式会社BitStarが運営するVtuberグループ『アマリリス組』の一員としてデビュー。
同年9月末日で『アマリリス組』が解散、一時フリーになる。
同年11月よりWFLE所属となる。
この移籍は、「VTuber初の大きな移籍」と評されている。
2020年5月末をもって引退。
【余談】BitStarとWFLEの関係
WFLEは2018年4月に設立された。
その直後の同年8月に、WFLEとBitStarは資本業務提携を結んでいる。
皇牙サキの移籍は資本業務提携という土台があったからこそ実現したのか、あるいは、皇牙サキの移籍を見越して資本業務提携を結んだのかもしれない。
2019年8月には、BitStar所属Vtuber『朝宮ゆい』とWFLE所属Vtuber『眠居ふわり』(➥Note.05)の2名がメインを務める番組『VTuberコントバラエティ 笑うV』の配信が開始された。
なお、資本業務提携が決まった際のBitStarプレスリリースでは「2019年には複数人のVTuberデビューを共同プロデュースする予定」とされていたが、これは実現しなかった模様。
会社Aと会社Bが協力して事業を行うときのスタイルのひとつ。
A社とB社が「○○の業務を協力してやろうね」と契約を結ぶのが「業務提携」。
このとき、A社がB社の(場合によってはB社もA社の)株主になると「資本業務提携」。
資本業務提携を結ぶ場合、単なる業務提携よりもより真剣に頑張るようになる。
なぜかと言うと、「ハイリスク・ハイリターン」になるからだ。
A社がB社の株主になる資本業務提携のパターンで説明しよう。
A社とB社は、一緒にVtuber事務所「ABプロダクション」を立ち上げる資本業務提携をすることにした。
このときB社の株価は1株5000円であり、A社はB社の株を1万株取得することにした。
5億円の出資だ。
残念ながら「ABプロダクション」はあまりヒットせず、1億円の損失となった。
B社の株価も1株4000円に下がってしまった。
A社が5億円で買ったB社の株1万株は、株式市場だと4億円の価値しかなくなってしまった。
A社は事業で1億円の損失を出したうえ、株価の下落で資産価値が1億円分減ってしまったことになる。
(逆に、事業が成功して株価が上がったら、事業の黒字分だけでなく株価の上昇分も得をすることになる。)
《参考記事》
●MoguLive 『「アマリリス組」のBitStarが13億円の資金調達 、人材採用など強化へ』
荒木英士氏は、「BitStarの掲げる『個人がスターのように輝き、自分らしさを表現できる場所を創る』というビジョンと、私たち(WFLE)の『なりたい自分で、生きていく。』というビジョンにはただならぬ共鳴を感じ、皇牙サキさんへの心酔も相まってご一緒させていただくことになりました。」
https://www.moguravr.com/bitstar-funding/
●BitStarプレスリリース
今回の提携を機に、WFLEはBitStar社のVTuberプロデュースをはじめとするVTuber事業を全面的に支援していきます。
https://bitstar.tokyo/corp/news_release/2489/
今後の具体的な協業内容としては、BitStar社がプロデュースする2DモデルによるVTuberの3D化支援や、収録および配信サポート実施のほか、2019年には複数人のVTuberデビューを共同プロデュースする予定です。
●ねとらぼ『自ら美少女に!? バーチャルYouTuber業界に100億円投資を決めたオタク社長にオタクが話を聞いてきた にゃるら』
にゃるら:VTuberの大きな移籍は初ですね。
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1811/10/news009_3.html
荒木:ですね。
さて、マグロナちゃんの企画に巻き込まれる(?)形で表舞台に登場した我らがNさん。
バラエティ番組のADよろしく番組を配信の内外で盛り上げた。
またファンアートを描かれたり3Dモデルを作成されたりとファンからも愛されている。
いくつかツイートを挙げよう。
また、このとき(推定)新卒1年目ながら、
・荒木英士氏 a.k.a.DJ RIO(@djrio_vr)
:グリー取締役・WFLE代表取締役にしてバーチャル美少女
・水谷誠也氏(@seiya_mztn)
:(当時)RK Music代表取締役・アプリ『REALITY』マーケティング責任者
《参考》https://www.wantedly.com/companies/reality/post_articles/291490
といった”えらいひと”たちとキャッキャウフフするなどのコミュ強っぷりを見せている。
(参考)
(2) 2019年10月
――『Lime』『眠居ふわり』
Nさんの仕事はマグロナちゃん・皇牙サキさん関係に留まらない。
2019年10月1日、
・『Lime』(@l_irne)
・『眠居ふわり』(@zzz_fuwari)
二名のマネージャーも兼務していると公表。
【Note.05】Lime・眠居ふわり
両名とも、「pixiv × LisPon × WFLE バーチャルYouTuber 共同オーディション」の合格者。
2018年8月、WFLEよりデビュー(初配信は同年11月頃)。
2021年5月1日をもって両名ともREALIY社のプロデュースを卒業し、現在は個人勢として活動している。
●Lime
twitter: @l_irne
Youtube: Lime Channel
●眠居ふわり
twitter: @zzz_fuwari
Youtube: 眠居ふわりのふわり塾
ちなみに、二人ともREALITY社のwebサイト内に紹介ページが残っている。
Lime
眠居ふわり
【超・余談】公式プロフィールのページ
REALITY社のwebサイトでは、
https://reality.inc/products/vtubers/xxxxxx
というディレクトリで所属Vtuber/singerの紹介ページが作成されている。
xxxxxxに入る数字を試しに”000001″から順に入力してみたところ、
(01~07: 404 not found)
08: Lime
09: カスカ
10: ヨミ
11: 眠居ふわり
12: LIZ
13: LITA
(14~28: 404 not found)
29: LIZ
30: LITA
…といった塩梅であった。
Nさんは、Limeが2019年11月16日に投稿したカバーMV『さよならテンダー』でMIXを担当したり、
マグロナちゃんの番組『まぐろなすたじお』でカメラ役をやったり、
マルチな才能を遺憾なく発揮している。
2. VESPERBELL始動――『マネージャー』Nさん
(0) デビュー準備期
さて、Nさんが
・マグロナちゃんのREALITY担当
・皇牙サキのマネージャー
・Limeのマネージャー
・眠居ふわりのマネージャー
として活躍している頃。
水面下では(遅くとも2020年9月頃から)、『VESPERBELL』プロジェクトが始動している。
『KMNZ』(➥Note.06)のプロデューサーである『サカニキ』氏(➥Note.08)を中心に、Nさんもまたプロジェクトメンバーの一員として立ち上げに携わっている。
(参考ツイート)
(1) デビュー
2020年6月7日、ついにVESPERBELLがデビューした。
立ち上げの中心であったサカニキ氏がプロデューサーに就任、Nさんはスタッフ(マネージャー)という位置付けである。
【Note.06】KMNZ
VESPERBELLの先輩バーチャルユニット。
2018年6月、MC LITAとMC LIZの2人ユニットとして活動をスタート。
ヒップホップを取り入れた音楽スタイルが特徴。
2023年12月31日、MC LIZが脱退。
2024年5月26日、MC NERO・MC TINAが加入。
現在はLITA・NERO・TINAの3人ユニットで活動している。
なお、KMNZの所属に関してはVESPERBELLと異なる経緯があるため概説する。
●2018年6月デビュー。
発足当初は株式会社Ficty(➥【Note.06】)とWFLEの共同プロデュースという形であった。
・Ficty側プロデューサー:二宮明仁 a.k.a. ninoP (Fictyの共同創業者でもある)
・WFLE側プロデューサー:サカニキ
…という体制である。
【余談】共同プロデュース
「共同プロデュース」というと、なんだか珍しく感じるかもしれない。
だが、WFLEのなかではKMNZが特別というわけではないようだ。
以下に例を挙げる。
●ダンテズ・ピーク
ゲームブランド『オトメイト』を運営するアイディアファクトリー株式会社との共同プロデュース。
(なお同ユニットは2020年3月27日をもって活動終了している。)
●なちょこ
アニメ会社株式会社アニプレックスとの共同プロデュース。
●すーぱーそに子
ゲーム会社株式会社ニトロプラスとの共同プロデュース。
このように、WFLE初期においては、既存IPや他社企画などの共同プロデュースが約半数を占めていた。
●2020年4月、KMNZプロジェクトのうちマネージメント業務をWFLEに移管。
●2021年6月、REALITY社の単独プロデュースとなる。
【Note.07】株式会社Ficty
株式会社FictyはVR/AR/AIを活用したIPプロダクション。代表取締役は菊地慶彦。
前身は、同じく菊地慶彦氏が2016年に設立した、VR体験施設の運営会社VR SPACE。
同社は『VR SPACE SHIBUYA』を運営していた(現在は閉店)。
2018年2月、旧VR SPACE社をFons株式会社と新VR SPACE社に分割。
2018年3月、Fons株式会社が中心となって株式会社Fictyを設立した。
いずれも代表取締役は菊地慶彦氏が努めている。
《参考記事》
https://www.nikkan.co.jp/releases/view/33137
同社にはかつて、KMNZの他に、
・somunia
・ワニのヤカ
・レオタードブタ(ピーナッツくんから派生したバーチャルヒップホップユニット)
等が所属しており、神椿スタジオとコラボEPを発売するなど精力的に活動していた。
しかし、いずれも所属契約は解消しており、2021年末から実質的に活動を休止していると見られる。
【Note.08】サカニキ
KMNZ初代(共同)プロデューサー、VESPERBELL初代プロデューサー。
2018年4月に新卒でグリーに入社、同7月にWFLEに出向。
KMNZのデビューが同年6月で、KMNZプロジェクトの立ち上げから携わっていたというのだから驚きだ。
(大学在学中より内定者インターンとしてグリーで仕事をしていたようである。)
WFLEのVtuber部門のプロデュース責任者を経て、バーチャルライブ制作プラットフォーム「REALITY Live Stage」などXR事業部のプロデュース総括としても活躍。
・『WONK』(➥Note.09) 「”EYES” SPECIAL 3DCG LIVE」
・『湘南乃風』 「風伝説番外編~電脳空間伝説2020~」
のプロデューサーを務める。
2022年3月末をもってグリーを退社。
2022年4月より、STORY.inc(東宝の社員が立ち上げた、東宝と業務提携をしつつ映像作品の企画・製作を行う会社)に入社。
【Note.09】WONK・井上幹
サカニキ氏の項で『WONK』の名前を見てピンと来た方もいるかもしれない。
VESPERBELLのオリジナル楽曲のうち多くを作曲しているのが、バンド『WONK』のベーシスト、井上幹氏だ。
井上幹氏はレコーディング・ミキシングエンジニアとしても活動されている。
VESPERBELLのオリジナル曲の中では
・Sg「RISE」
…作編曲/ベース演奏/レコーディング/ミキシング/マスタリング
・Sg「VERSUS」
…作編曲/ベース演奏/ギター演奏/ミキシング/マスタリング
・EP『EX MACHINA』
…全曲の作編曲/ベース演奏/ギター演奏/ミキシング/マスタリング
・Alb『革命』
・全曲のミキシング・マスタリング
・「revelation」
…編曲/ベース演奏/ギター演奏
・「メイビス」「inspire」「Dear」
…作編曲/ベース演奏/ギター演奏
…と、VESPERBELLのオリジナル楽曲の音の多くが井上幹氏によって出来ていると言っても過言ではない。
さて、井上氏がWFLE(VESPERBELLやKMNZ)の音楽制作に携わり、WFLEが井上氏の3Dライブをプロデュースし…と、何かと縁のあるWFLEと井上氏。
その由縁として、井上氏には「グリーに勤めるサラリーマン」という顔がある。
井上氏は、2013年に新卒でグリー入社後、2014年にグリーが子会社として設立したWright Flyer Studio(略してWFS)にてゲームサウンドクリエイターを努めている。
《参考記事》WFS公式サイト — 社員インタビューhttps://www.wfs.games/blog/people/37
WFLEの第一弾XRライブのアーティストとしてWONKに白羽の矢が立ったのも、この縁によるところのようだ。
《参考記事》グリー公式オウンドメディア『deGREEs』
–【特集】リアルとバーチャルの融合が見せる新しいエンターテインメント
https://corp.gree.net/jp/ja/6degrees/2020/08/07.html
(2) 2020年6月~10月
――穏やかな滑り出し
6月7日、
①革命デュアリズム
②The Everlasting Guilty Crown (ヨミ)
③テレキャスター・ストライプ
④再教育
の4本のカバーMVを同時投稿してデビューしたVESPERBELL。
その滑り出しは比較的穏やかなものだった。
カバーMVの投稿以外に目立った活動は、
この2つ位だろうか。
ちなみに、VESPERBELL RADIO は、ヨミとカスカが「配信やりたい!」と偉い人に言って始まった企画だ。
6月~10月で投稿したカバーMVは22本。
10月15日にYoutubeのチャンネル登録者数が4000人を突破。
なお、10月1日にWFLEがREALITY株式会社に社名を変更している。
(3) 2020年11月~2021年5月
――RISE・ブレイク・VERSUS
●RISE・ブレイク
デビューからの穏やかな流れを一気に変えたのが、1st Sg. 『RISE』のリリースと、それに伴う露出の増加だ。
時系列で羅列する。
なお、以下の記載では
◆:VESPERBELL等が行ったことや出来事
○:Youtubeの再生数等
…という様式を用いる。
◆11月13日、Youtubeにて『RISE』プレミア公開。
◆11月14日、『RISE』のリリースを記念してYoutubeにてVESPERBELL初の3D配信が行われ、ここで『RISE』の生歌唱が初披露される。
○11月16日、早くも『RISE』の再生数が1万回を突破。
○11月21日、チャンネル登録者数 1万人を突破。
デビューからチャンネル登録者数5000人まで5ヶ月かかったところ、そこからたった13日でさらに5000人積み上げた…と言えば、その勢いが伝わるだろう。
◆11月22日、イベント『音楽を止めるな2』の「Live Video Pick Up」にて3D配信での『RISE』歌唱シーンが流れる。
○12月 2日、チャンネル登録者数 2万人を突破。
○12月 8日、チャンネル登録者数 3万人を突破。
○12月17日、チャンネル登録者数 4万人を突破。
◆12月19日、活動半年記念ラジオ「HALF YEAR ANNIV. RADIO」放送。
◆12月25日、「youtube #急上昇クリエイター」にVESPERBELLチャンネルが掲載される。
◆12月26日、第3回V紅白(主催:歌衣メイカ)ピックアップでRISEが紹介される。
○12月26日、チャンネル登録者数 5万人を突破。
◆12月27日、『VIRTUAFREAK -REWIRE-』でリアルライブ初出演を果たす。
●VERSUS
このように、『RISE』リリースをきっかけに2020年末に怒涛の勢いでブレイクしたVESPERBELL。
2021年に入り1月~2月中旬まで、活動に一旦の落ち着きが戻るが、その間も
○1月20日、チャンネル登録者数 6万人を突破
○2月12日、「ツキアカリのミチシルベ」がチャンネル初の50万再生突破
…と、順調な伸びを見せている。
そして、2月終盤、VESPERBELLは再び大きく動き出す。
2nd Sg. 『VERSUS』だ。
◆2月28日、2nd Sg. 『VERSUS』リリース
◆ 同日 、VESPERBELL初のグッズ『OFFICIAL GOODS vol.0』予約開始
●広がる関係
『VERSUS』リリースと重なるタイミングでの活動は、今後の関係の広がりにつながるという共通点が見いだせる。
単純な時系列順より関係先ごとに分類したほうがわかりやすいので、そうする。
●RIOT MUSICと
◆2月27日、Youtube配信『【生配信】SPECIAL COVER LIVE with 松永依織 凪原涼菜(#VESPER_RIOT)』
『松永依織』『凪原涼菜』はBrave Groupが運営するVsingerレーベル『RIOT MUSIC』に所属するVsinger。
これがチャンネル初のコラボ配信である。
VESPERBELLにとっては『VERSUS』の、RIOT MUSICにとっては3月21日に実施する『RIOT MUSIC 1st LIVE ” Re:Volt “』の宣伝を目的とした配信だ。
そのライブ『Re:Volt』本編にもVESPERBELLはゲスト出演した。
また、MVとしても
◆21年4月15日 ヨミ×凪原涼菜 コラボカバーMV『再会』
◆21年4月15日 カスカ×松永依織 コラボカバーMV『IGNITE』
◆21年4月22日 ヨミ×凪原涼菜 コラボカバーMV『1,000,000 TIMES』
◆21年4月22日 カスカ×松永依織 コラボカバーMV『光るなら』
を双方のチャンネルで2週連続公開した。
これがVESPERBELL初のコラボカバーである。
以降、VESPERBELLとRIOT MUSICは友好的な関係を築くこととなる。
(参考)
【余談】REALITYとBrave Group・RIOT MUSIC
REALITY社はRIOT MUSICの運営会社であるBrave Groupに2018年から出資している。
2018年というと、VESPERBELLもRIOT MUSICも誕生する前のことである。
当時、Brave Groupの社名は株式会社ブイチューバーであった。
また、REALITY社は当時同社の『ゲーム部プロジェクト』のIP展開についてライセンシーとして協業している。
これは全くの個人的な妄想であるが、下の記事を見ると、道明寺ここあさんがRK Musicからデビューする世界線もあったかもしれない、ような気がするが、どうだろうか。
(参考記事)
Wright Flyer Live Entertainment、VTuber「ゲーム部プロジェクト」のIP展開を支援(WFLEプレスリリース)
2024年現在に至るまで、REALITYは一貫してBrave Groupの主要な株主のうちの1社であり、2023年12月20日には追加で出資している。
また、REALITY Studios代表取締役 杉山綱祐氏がBrave Groupの社外取締役に就任する等、経営レベルで緊密な関係が続いている。
【余談】事務所を超えた友情――カスカと松永依織
REALITYとRIOT MUSICには会社として関係がある。
また、RIOT MUSICの初期メンバー(道明寺ここあ・芦澤サキ・松永依織・凪原涼菜)とVESPERBELLはデビュー時期が近く、カバー曲の方向性も重なる部分がある。
《スタート段階で名前を広める効果的な方法》の一つ・コラボの相手として適性が高かったと言える。
上に挙げたコラボは、そういったビジネス的な視点をもとに企画されたものだろう。
一方で、ビジネス的な視点を超えて、VESPERBELLカスカと松永依織には深い友情があるようだ。
カスカはしばしば松永依織のことを(ヨミを除いた)「バーチャル活動をしている中で1番の(/唯一の)友達」と評している。
実際、2024年9月時点でこれまでカスカがコラボした相手をカウントしてみると
・歌枠・配信ライブ:2回 / 2回
・カバーMV:2回 / 4回 (残り2回は事務所の先輩であるKMNZ LIZ)
…を松永依織が占めている。
単なるREALITYとRIOT MUSIC という関係を超えた「カスカと松永依織」という関係が、活動にも表れているといえよう。
●Dimension Labelsと
◆3月24日 『Dimension Labels』のYoutube配信「SPOTLIGHT発売、DVMF開催直前・記念特別生配信」に出演
◆3月28日 オンラインフェス「Dimension Labels Virtual Music Festival」DAY2にオープニングアクトとして出演
…と、『Dimension Labels』 から発売されるコンピレーション・アルバム『SPOTLIGHT』に関連する出演をしている。
このときリリースされたのは『SPOTLIGHT vol.1』。
続く『SPOTLIGHT vol.2』にはVESPERBELLもCD参加アーティストの一員となり、オリジナル曲『Eclipse』およびコラボカバー曲が収録される。
なお、本ライブの制作はREALITY社が行っている。
●KMNZと
事務所の先輩であるKMNZとは、
・デビュー間もない2020年6月22日、VESPERBELLからKMNZへ2周年おめでとうメッセージを送る
・VESPERBELLのRISEリリース記念3D配信にKMNZがゲスト共演する
…など、最初期から関係があった。
その関係がMVの形に結実したものとして、
◆21年5月12日 ヨミ×LITA コラボカバーMV『HIP』
◆21年5月19日 カスカ×LIZ コラボカバーMV『ヒトリゴト』
が公開された。
●その他
その他、この期間の出来事を羅列する。
○3月 1日 Youtubeチャンネル登録者数7万人突破
◆3月22日 『音楽を止めるな3』DAY2で『RISE』が流れる
◆3月23日 『音楽を止めるな3』DAY3で『VERSUS』が流れる
(4) 2021年6月~11月
――1周年・EX MACHINA
2021年6月7日、デビュー1周年。
1周年記念のカバーMV『No.1』で2年目のVESPERBELLがスタートした。
なお、VESPERBELLのキャラクターデザインを担当したイラストレーター・ろるあ氏による1周年を祝うイラストは必見である。
https://x.com/Rolua_N/status/1421073053866291203
(埋め込みが上手く機能しなかったためリンクを張る)。
●EX MACHINA
この1周年のタイミングで、ふたたび大きな動きを見せる。
1st EP『EX MACHINA』だ。
◆2021年6月24日 EP『EX MACHINA』収録曲「ignition」Youtubeプレミア公開
◆2021年6月26日 1st ANNIVERSARY LIVE:[EX MACHINA]開催
◆ 同日 OFFICIAL GOODS vol.01 受注開始
◆2021年7月17日 [EX MACHINA]同時視聴再放送@Z-aN
◆2021年8月 6日 EP『EX MACHINA』収録曲「EX MACHINA」プレミア公開
◆2021年8月 7日 EP『EX MACHINA』ストリーミング配信開始
EP『EX MACHINA』収録曲はすべて、『RISE』および『VERSUS』から引き続き「作曲:井上幹」「作詞・ストーリー:ハル」により制作されている。
先の話になるが、次のオリジナル曲『Eclipse』は作詞作曲ともに柊マグネタイトが担当している。
また、その次にリリースされた1st Alb.『革命』では、新規収録となる7曲のうち4曲の作曲をゲスト作曲家が担当し、また「ハル」により作詞・ストーリー構成された曲は0曲である。
したがって、『RISE』からこの『EX MACHINA』までを「初期VESPERBELLの世界観」と区切ることができるだろう。
(そこで描かれる世界観がどんなものか、についての私なりの解釈は、別稿で記事にしている。)
『EX MACHINA』関連のものを除いた出来事について触れる。
●Youtube・配信関連
○7月30日 Youtubeチャンネル登録者数10万人突破
→10万人突破記念のカバーMVは『this game』。
◆8月14日 『VESPERBELL RADIO #6』配信
デビューから定期的に配信されていた『VESPERBELL RADIO』シリーズは、この#6で一旦の区切りとなる。
◆9月19日 チャンネル初のYoutubeでの歌枠配信(ヨミ)
◆10月15日 カスカの初めてのYoutubeでの歌枠配信
○10月31日 Youtubeチャンネル総再生回数2000万回突破
《VESPERBELLとしての配信》は『VESPERBELL RADIO』から始まった。
一方で、ヨミは2020年の遅くとも11月頃から、カスカは2021年3月から、アプリ『REALITY』での配信を始めている。
(REALITYでの配信はすべて生配信であり、アーカイブ機能はない。)
特にヨミは『REALITY』で歌を披露することが多く、ファンに非常に好評であった。
この流れを受けて、収録・トーク配信である『VESPERBELL RADIO』からYoutubeでの歌枠生配信へ発展的にシフトしたと見ることができる。
今では、Youtubeでの歌枠配信は、ファンにとって、カバーMVの投稿と並んで「最も身近にVESPERBELLの素晴らしい歌声を楽しめる場所」となっている、と言っても過言ではない…のではなかろうか。
●イベント出演
◆8月29日 『TUBEOUT!FES -2021SUMMER-』出演
→セトリはRISE、ピースサイン(Cover)、God knows…(Cover)、Hurtの4曲。
◆10月23日 『TUBEOUT! vol.12 』出演
→VESPERBELLとBOOGEY BOXXの2マンライブ。
●その他
◆9月19日 Pixiv Fanbox にて初のファンクラブである『VESPERBELL FANCLUB』開設
(N) Nさんのお仕事
●VESPERBELLの「マネージャー」??
さて、(1)~(4)で概観したVESPERBELLの歩みを、Nさんにフォーカスして見返してみよう。
Nさんは一体どんな仕事をしていたのだろう?
まず、前提として、VESPERBELLのメインスタッフはプロデューサーのサカニキとマネージャーのNさんの2名だけであった。
(確たるソースが出てこないが、幾度か話で聞いた記憶がある。)
では、サカニキとNさんがどのように仕事を分担していたのか?
これについては明らかにされていないため、想像で語るほかない。
大まかに想像するに、
・オリジナル曲などのサウンドプロデュース
・スタジオ収録する場合のカバー曲のディレクション
…等、《VESPERBELLの音楽の根幹に関わる部分》はサカニキ氏が担っていたはずだ。
【妄想】”Story & Lyrics ハル” とは何者か
VESPERBELLの初期オリジナル曲、
・1st Sg.『RISE』
・2nd Sg. 『VERSUS』
・1st Ep. 『EX MACHINA』収録の「ignition」「hurt」「EX MACHINA」
以上の5曲は、いずれもクレジットに
“Story & Lyrics ハル”
と記載がある。
このハル氏に関する情報は一切公開されていない。
そのためこれは完全に私の妄想であるが、ハル氏の正体はサカニキではなかろうか。
そう考えるに至るきっかけを挙げる。
まず、KMNZにおけるFictyとREALITYの役割分担である。
2020年5月にマネージメント業務がREALITYに移管された際、Ficty側プロデューサー二宮氏から下のようなツイートがあった。
このように「ストーリーラインを監修」がプロデューサーの業務であるとすれば、VESPERBELLでそれを担当しているのはプロデューサーであるサカニキ氏であるはずである。
そして、”Story & Lyrics”のうち”Story“に込められた、歌詞を超えたVESPERBELLのコアに関わる部分は、まさにこの「ストーリーライン」であると言えよう。
次に、サカニキ氏のこんなツイートがある。
サカニキ氏が作詞するのはKMNZかVESPERBELLの楽曲であろう。
ところが、KMNZにもVESPERBELLにも『サカニキ』名義で作詞にクレジットされている楽曲はない。
そして、KMNZの楽曲のうち制作時期が2021年1月と重なりそうなシングル『Glory Days』『KMNSKOOL』・アルバム『KMNROUND』収録曲のクレジットを見ても、それらしい名前は見当たらない。
一方、VESPERBELLの音源のうちアルバム『EX MACHINA』はリリースが2021年6月26日。
作詞のタイミングとしてはドンピシャである。
消去法で、サカニキ氏の作詞した曲は『EX MACHINA』収録曲である可能性が高い。
また、時期は前後するが、次のツイートも推測を補強する資料となる。
「タイトルに全てがこもってる」と言い切れるのは、タイトルを付けた本人であると考えるのが自然だ。
そして、タイトル、ましてやファーストシングルのそれは、歌詞やアーティストの方向性=ストーリーと深い繋がりを持つ。
「ストーリー・歌詞・タイトル」をひと繋がりのものとしてサカニキが決めた、と考えられるのではないだろうか。
一方で、日々の細やかな業務を含めNさんに任される領域もそれなりに大きかったのではないか。
なにせ、サカニキ氏は多忙である。
REALITY社のXR事業の責任者として、明らかになっている範囲でも
・2020年8月『WONK』「”EYES” SPECIAL 3DCG LIVE」
・2020年12月 『湘南乃風』 「風伝説番外編~電脳空間伝説2020~」
の2つ、他にも先に挙げた「Dimension Labels Virtual Music Festival」など、VESPERBELLのデビューからこれまでの期間に重なって、ずっと大きなプロジェクトを担っていた。
また、VESPERBELLだけでなくKMNZのプロデューサーとしての職務もある。
VESPERBELLに割ける時間はそれほど多くなかったはずだ。
さらに、特定の時期には役割分担にも変化があったはずだ。
具体的には、2021年4月か7月にはNさんが実質的にプロデューサーとしてほぼ全ての職務を担うようになったと推測される。
というのも、サカニキ氏は2022年3月をもってREALITY・グリーを退社し、VESPERBELLのプロデューサーはNさん、KMNZのプロデューサーはさも氏へと引き継がれた。
そのKMNZの引継ぎの時期・態様に関して、さも氏は以下のようにツイートしている。
VESPERBELLに関しても基本的には同様に引継ぎが行われただろう。
ただし、すでに軌道に乗っていたKMNZと、デビューしたばかりのVESPERBELLでは少し状況が異なる。
VESPERBELLにとって初めてのワンマンライブである1周年ライブ『EX MACHINA』開催・および初のEP『EX MACHINA』リリースを区切りとしている可能性も低くはない。
そういう意味でも『EX MACHINA』が初期VESPERBELLの世界観の集大成であると言えるのではないだろうか。
少なくとも、2021年9月に開始されたVESPERBELL FANCLUBは最初からNさんが管理運営しており、「VESPERBELL STAFF」としての投稿は全てNさんの投稿であると私は見ている。
●VESPERBELL以外のお仕事
サカニキだけでなくNさんも勿論、VESPERBELL以外のお仕事もしている。
そのうち明らかな範囲を記していく。
まず、VESPERBELLデビューの段階で
・マグロナちゃんのREALITY担当
・Limeのマネージャー
・眠居ふわりのマネージャー
を兼務していた。
このうちLime・眠居ふわりの両名は、2021年5月をもってREALITY社から独立、個人勢として活動していくこととなった。
それとほぼ入れ替わりのタイミングで、2021年3月、Nさんがこんなツイートをしている。
そして4月、Nさんのtwitter bioに『RK Music』と書き加えられた。
RK Musicの代表取締役である水谷氏直々にツイートしている。
水谷氏は2019年7月以来のラブコールが叶った形である。
【Note.10】RK Music
RK Musicは、WFLEとキングレコード株式会社が共同で出資して設立した会社。
出資の割合はWFLE 51%:キングレコード49%。
「RK Music」 という名前の由来は、
WFLEの主力プロダクトREALITYの”R”
キングレコード=KING RECORDの”K”だと思われる。
設立日は2018年8月31日。
WFLEの設立のおよそ3ヶ月後である。
設立時の代表取締役はREALITY水谷氏。
業務の範囲は、設立時のプレスリリースによると、
「WFLEがプロデュースするVTuberや既に活躍中の人気VTuberへのオリジナル楽曲提供、プロモーションを行う等音楽アーティストとしてプロデュースしていきます。
VTuberの活動が動画配信のみに留まることなく、音楽アーティスト活動を通したコラボレーションやライブイベントの開催、関連グッズ等の制作など、さまざまな場所へ進出し活躍するための環境作りをサポートしていきます。」
(参考記事)
RK Musicとしての最初のCDリリースは、コンピレーションアルバム『IMAGINATION vol.01』。
このプロジェクトの中心は水谷氏・キングレコードからRK Musicの取締役に就任した中西氏。
(参考記事)
IMAGINATIONシリーズはvol.4までリリースされており、このvol.4にはVESPERBELLも参加している。
RK Musicは、IMAGINATIONシリーズの次なる事業として、バーチャルタレントのプロデュースに進出。
2020年3月30日、プロダクション『ライブユニオン』を設立。
初期メンバーとして、アプリ『REALITY』を中心に個人VSingerとして活動していた『焔魔るり』『HACHI』の所属が決まった。
(参考記事)
『ライブユニオン』には2024年9月現在、上記2名に加え『瀬戸乃とと』(2020年9月~)『水瀬 凪』(2021年2月~)が所属している。
過去には、
『叶秘密』(2020年6月~2024年3月)
『aMatsuka』(2020年11月~2022年9月)
『響歌シノ』(2021年2月~2022年12月)
…が所属していた。
2023年7月、『KMNZ』および『VESPERBELL』がこれまで所属していたREALITY StudiosからRK Musicへ移籍。
(参考記事)
グリー系列のVsingerの所属企業はRK Musicに1本化された。
一方、RK Music内のVsingerは、社内プロダクション『ライブユニオン』に所属する者とそうでない者の2パターンに別れることとなる。
なお、「移籍」とはいっても、RK MusicとREALITY Studiosの設備や実務スタッフはかなりの範囲で重複しているそうだ(いわば2枚の看板を掲げていた状態)。
(参考記事)
『VESPERBELL』のプロデューサーも引き続きNさんのままであった。
2024年5月25日、新たに『CULUA』『NEUN』『MEDA』の4名がデビュー。
(参考記事)
2025年10月27日、新たに『CONA』(コナ)『IMI』(イミ)『XIDEN』(シデン)ヨノの4名がデビュー予定。
(参考記事)
今後、半年~1年おきに新人をデビューさせていく方針だそうだ。
RK MusicでNさんはどんな仕事をしていたのだろう?
まず、Nさんのツイートで挙がっているのは『NEGI☆U』だ。
【Note.11】NEGI☆U
VTuberグループ「ホロライブ」に所属し、「hololive IDOL PROJECT」に参加している「湊あくあ」「大空スバル」「桃鈴ねね」からなるユニット。
読みは「ねぎゆー」。
2021年9月1日、1st Sg.『つまりはいつもくじけない!』がRK Musicよりリリースされた。
表題曲「つまりはいつもくじけない!」は、TVアニメ『ジャヒー様はくじけない!』第1クールエンディング主題歌。
なお、「ねぎゆー」は1st Sg. 以降にも、
・Sg『寿司☆でしょ!』
・EP『ねぎゆーのパないうた』
をリリースしているが、これらはRK Musicではなくカバー株式会社よりのリリースとなっている。
次に、RK Music制作のコンピレーションアルバム『IMAGINATION_R vol.01』についても言及している。
その他には、Nさんが具体的に挙げているわけではないが、RK Music内プロダクション『ライブユニオン』所属アーティスト『HACHI』も6月にクラウドファンディング、8月に1st ワンマンライブと大きな動きがあった。
【Note.12】HACHI・#ハチヨミ
RK Music社内プロダクション『ライブユニオン』所属のVsinger。
2019年7月、アプリ『REALITY』で配信活動を開始。
2020年3月、RK Music社内プロダクション『ライブユニオン』発足と同時に所属。
2024年、キングレコードレーベル『KAC』(KING AMUSEMENT CREATIVE)のサブレーベル『SONIC BLADE』よりメジャーデビュー。
【余談】HACHIの正確なメジャーデビュー日は?
「メジャーデビュー」を「メジャーレーベルより音源をリリースすること」と定義すると、HACHIのメジャーデビュー日は、メジャー1st Alb.『for ASTRA』をリリースする11月3日となりそうだ。
しかし、同アルバム発売に先駆けて、収録曲の「Dusk」が8月9日に先行配信されている。
(同曲はTVアニメ「SHIBUYA♡HACHI」の主題歌としても使用されている。)
この「Dusk」の先行配信およびTVでの使用時点で、著作権法上はデジタルリリースのレコード会社は「キングレコード」であると処理されているはずである。
そのため、この8月9日をメジャー・デビュー日と見ることもできなくはない。
ちなみに、メジャーデビュー決定の公式情報は5月10日にtwitterで発表されており、
5月11・12日に開催されたキングレコード主催・キングレコード所属アーティストが出演するライブ『KING SUPER LIVE 2024』にも出演している。
VESPERBELLとの初共演は2021年8月の『TUEBEOUT!FES-2021 SUMMER-』。
(このFESは3ステージで行われており、実際にはHACHIとVESPERBELLが立ったのは別のステージであるが。)
以降、VESPERBELLの特にヨミと親交を深め、
MVでは、22年8月3日『花に雨を、君に歌を』同4日『-ERROR』でコラボカバー。
歌枠でも、22年8月9日にコラボ歌枠、23年12月20日にはオフコラボ歌枠を行っている。
23年3月10にリリースされたRK MusicコンピレーションEP『HARMONICS vol.01』では、書き下ろし曲『Admit』をデュエット歌唱した。
活動外でもヨミがHACHIのいる北海道に遊びに行くなど仲睦まじい。
NさんのツイートもRK Music関連のものの中ではHACHIに触れるものが多かったから、これらに関与しているのかもしれない。
(5) 【次回予告】2021年11月~2022年7月
――CF・飛躍・革命
さて、2021年11月から、VESPERBELLは史上最大の動きを見せる。
・・・といったところで、続きは
VESPERBELL&Nさんを振り返る(その②)
に記事を改める。
ここまで目を通して下さった方はごく少数だろう。
ご奇特な貴方、お付き合いいただきまして、ありがとうございました。
よろしければ、次の記事もお付き合いください。
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